カメラータ・トウキョウ レコーディング・ニュース
2000年12月 ウィーン
 20世紀最後のウィーン録音。12月中旬から半月の滞在となった。気温がマイナス5度という厳しい寒さの中、おなじみのスタジオ・バウムガルテンでクリスマス休暇前までに3つのプロダクションを収録した。右の写真は12月17日ハイティンク指揮のウィーン・フィル定期公演が行われた楽友協会ホールでの、ウヴェ・タイマーとペーター・ミニッヒ。ウィーン・フィルはこのあとアーノンクールとのニューイヤー・コンサートに向けてのリハーサルに入り、TV中継されたお正月の舞台ではコンマスにヒンク、フルートにシュルツ等お馴染みの顔が並ぶ。左は29日のリハーサル風景です。(プロデューサー・井阪 紘)
ウィーン・フィル タイマー&ミニッヒ

1)ウィーン・シューベルト・アンサンブル
  2000年12月18〜19日 スタジオ・バウムガルテン、ウィーン

 ウィーン・フィルの12月のスケジュールが突然の変更、EMIでチョン・キョン・ファとサイモン・ラトルによるブラームスの「ヴァイオリン協奏曲」のコンサートと録音が入ったため、12月21日から予定していたウェルナー・ヒンクとジャスミンカ・スタンチュールのブラームスのソナタ集の録音は延期。
 急遽、浮かび上がったプランは、前々から録音の機会があれば録音することを約束していたウィーン・フィルの若手中心に結成された「ウィーン・シューベルト・アンサンブル」による懸案の、シューベルトの父親が家庭で息子達と奏いたモーツァルトの「プラハ」交響曲の弦楽五重奏版の録音である。
 このグループはイタリア人の若手ピアニスト、チャールズ・コッキア(写真右下)を中心に1998年に結成。父親も有名なフィルハーモニカーであったマルティン・ツァロデック(写真右上)らが弦楽部を受け持つという変則的な編成のアンサンブル。
 今回はシューベルトの父親フランツ・シューベルトの編曲したモーツァルトの「プラハ」シンフォニー、コッキアのピアノが加わったシューベルトの「ピアノ四重奏曲のためのアダージョとロンド・コンチェルタンテ」、コッキアの奥さんでピアニストでもある藤原美穂さんも参加したシューベルトの4手のための「ロンド ニ長調 D.603, Op.138」や「性格的な行進曲 ハ長調 D.886, Op.121」を加えて1枚とし、8月頃発売の予定。
[★CDは2001年8月、28CM-638として発売]
ウイーン・シューベルト・アンサンブル マルティン・ツァロデック
ウイーン・シューベルト・アンサンブル コッキア&フジワラ

2)岡田博美とウィーン・フィルハーモニア弦楽三重奏団による
  ブラームスのピアノ四重奏曲完成。
  2000年12月20〜21日 スタジオ・バウムガルテン、ウィーン

 3年来の懸案であった岡田博美とペーター・ヴェヒター率いるウィーン・フィルハーモニア弦楽三重奏団とのブラームスのピアノ四重奏曲3曲とピアノ五重奏曲の最後の1曲、ピアノ四重奏曲 第2番 イ長調 作品26が2日間に渡って録音された。
 このトリオは現在、ヴィオラがトビアス・リー、チェロがトーマス・ヴァルガにメンバーを更新しているが、今回の録音は旧メンバーのランデラー、ノージュが演奏した。
 あまりにも有名な美しいこのピアノ四重奏曲をウィーン・フィルのメンバーと岡田博美の研ぎ澄まされた音と歌に溢れた演奏で聴く喜びは、セッションとはいえプロデューサー冥利に尽きる2日間であった。
 [★CDは2002年3月、20CM-666〜7として発売]
岡田&フィルハーモニア・トリオ 岡田&フィルハーモニア・トリオ

3)井上直幸、バッハとベルクを弾く。
  2000年12月22日 スタジオ・バウムガルテン、ウィーン

 井上直幸のカメラータ復帰第1弾となった 1999年9月のウィーン録音 はベートーヴェンのピアノ・ソナタ第31番作品110、シューベルトのピアノ・ソナタ 第21番 D.960がリリースとなっているが、この時同時にバッハの「パルティータ 第6番 ホ短調」と武満 徹の「ピアノ・ディスタンス」が録音済となっていた。それに追加して、バッハ〜武満〜ベルクという3人の作曲家での1枚を、3月のリサイタルに会わせて発売するべく、今回はバッハの「フランス組曲 第5番 BWV816」とベルクのピアノ・ソナタ 作品1が前年と同じスタインウェイを使って録音された。
[★CDは2001年3月、CMCD-15080(オリジナルは28CM-616)として発売]

 井上は2度目のウィーンでこの街がすっかり気に入り、今後のレコーディングはここに移し、次はベートーヴェンの「ディアベリ変奏曲」を2月に録音する予定。
井上直幸  
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