カメラータ・レコーディング・ニュース 2000/2
 ハイダーの自由党が第2党になってオーストリアの国勢が大揺れの2月。その最中での録音や国立歌劇場の「オペルンバル」に参加するのは危険を伴うのではと心配しながらのウィーンでした。
 ウィーン弦楽四重奏団はベートーヴェンの「ラズモフスキー 第1番」ヘ長調 作品59-1で、新メンバーになって初の録音に挑みましたが、スタジオの都合で2楽章の終わったところで中断、6月5日に残りを録ることでスケジュールを再調整となり今回の報告からはずしました。ウィーンでは従ってシュルツの「フランス作品集」がほぼ完成しました。まずはその報告から。
(プロデューサー:井阪 紘)

(1)2000年2月19日〜20日 ヤマハホール、ウィーン
   ヴォルフガング・シュルツ/フランス作品集
 収録曲目ではどうしてもフルーリーの企画と重複が避けられず、プーランクの最もポピュラーなフルート・ソナタは二人共が録音。
 日本へもたびたび来日しチェロの北本秀樹氏、ヴァイオリンの大谷康子さんらと室内楽で共演しているアドリアン・コックスをパートナーに選び、シュルツはファボリーテンの近くシュライヤーガッセのヤマハホールで録音。このホールはリヒテルがウィーンに来るとよくプライヴェートな形で演奏会をした場所であり、フルートとピアノにはピッタリのバランスをつくってくれる音響が私たちのお気に入りのホールというわけです。

収録曲目
  エンリ・ディティユー:ソナチネ
   Henri Dutilleax: Sonatine
  ジョリヴェ:リノスの歌
   Andre Jolivet: Chante de Linos
  ドビュッシー:牧神の午後への前奏曲
   Claude Debussy: Prelude a l'apres-midi d'un faune
  ドビュッシー:パンの笛
   Claude Debussy: Syrinx

[★CDは2002年7月、CMCD-28001として発売]

シュルツ
ヴォルフガング・シュルツ
コックス
アドリアン・コックス
シュルツ&コックス
シュルツ&コックス
ヤマハホールで録音

2)2000年2月21日〜22日 イタリア
   クラウディオ・ブリツィ アッシジの「サンタ・マリア・デリ・アンジェリ
   大聖堂」の新設オルガンによるバッハの新録音
アッシジの街並み 1998年以来、イタリアのウンブリアでの録音に着手、インデアミューレとブリツィの録音をこの地で続けているカメラータでは、前回のテレマンの録音で親しく仕事をしたイタリアのオルガンビルダーのグイド・ピンキーの新しいオルガンが、聖フランチェスコで有名なアッシジの「サンタ・マリア・デリ・アンジェリ大聖堂」に設置されたのを記念して全曲バッハの作品によるオルガン録音を行いました。カトリック教会でプロテスタントの作曲家たるバッハを演奏するのは、ウィーンあたりではまだ抵抗があってそれは例外に近いのですが、イタリアではもう昔から普通にバッハのオルガン曲は演奏されているとのこと。ブリツィはバッハのオルガン作品全曲の録音に意欲を持っているようで我々もそのプロジェクトを検討中。
 ともかく世界中で最も美しい響きを持つ教会の、最も魅力あるオルガンとの組み合わせによる録音だったわけですが、毎日夜8時に始まって朝6時に終わるセッションは、モニタールームが6度くらいまで寒くなる場所で、凍えるかと思うほどに大変なセッションでした。(写真右上は教会の窓から見たアッシジの街並み)

収録曲目
J.S.バッハ:
  トッカータとフーガ ニ短調 BWV.565
  ソナタ 変ホ長調 BWV.565(6つのソナタより第1番)
  フーガ ロ短調 BWV.525(コレルリの「トリオ・ソナタ」op.3-4の
  第2楽章の主題による)
  〈コラール変奏曲〉「恵深きイエスを迎えよ」BWV.768
  協奏曲 ハ長調 BWV.977(原曲はマルチェルロの「オーボエ協奏曲」
  として有名)
  前奏曲とフーガ ニ長調 BWV.532

  [★一部の曲は2001年1月、28CM-618として発売]
ブリツィ
真新しいオルガンに向かうブリツィ
大聖堂内部
大聖堂内部
大聖堂内部
サンタ・マリア・デリ・アンジェリ大聖堂の内部
教会の司祭とブリツィ
お世話になった司祭とブリツィ

3)2000年2月24〜26日
   トーマス・インデアミューレ&クラウディオ・ブリツィ/バッハ作品集【2】
 昨年12月に続いてのアローネ録音。バッハのヴァイオリン・ソナタやヴィオラ・ダ・ガンバのソナタ等をオーボエに移したもので、バッハ自身、同じ曲をカンタータに使い回したりしているから、楽器をおきかえることは音楽を損ねるものではないと言う視点で、もう1枚のバッハ録音。(1枚目昨年12月に収録済み)

収録曲目
J.S.バッハ:
  トリオ(オルガン曲)ト長調 BWV.586
  ヴィオラ・ダ・ガンバ・ソナタ 第3番 ト短調 BWV.1029
  ヴァイオリン・ソナタ ト長調 BWV.1019
  〈コラール変奏曲〉「恵深きイエスを迎えよ」BWV.768

 引き続き6月に残りを録音の予定。なお、クラウディオはコラール変奏曲 BWV.768では、ポジティブオルガンの上にチェンバロをおいて、両方の楽器を同時に演奏しています。

[★CDは2004年8月、CMCD-28052として発売]
ブリツィ&インデアミューレ
ブリツィ&インデアミューレ
アローネの元教会だった建物(C.IN.S.I.T. )で、昨年12月に引き続いての録音
ブリツィ&インデアミューレ
ポジティブオルガンとチェンバロを同時に操るブリツィ
インデアミューレ
インデアミューレ

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