Camerata Recording News

 今回は長いヨーロッパ滞在でした。イタリアで2カ所、1週間滞在のあと、ウィーンで2週間、そしてチェコに移っての録音となりました。レコーディングの間のウィーンは真夏ともいえる暑さ。しかし、プラハでは15度まで気温も下がり、聖ミヒャエル教会では重ね着をして寒さをしのぎました。
 録音のための楽器探し、会場探しは演奏と同じぐらい重要ですが、今回はイタリアとチェコの教会を使って、よい収録ができました。(プロデューサー・井阪 紘)


(1)5月20日〜22日、24〜26日(イタリア)
  トーマス・インデアミューレとクラウディオ・ブリツィ
 テレマン「6つの協奏曲と6つの組曲」(1734年)
 なぞめいたこのテレマンのフルート作品は、1734年にハンブルクで出版されましたが、フルートと伴奏パートとがパート譜として別々に印刷されたため、長い間チェンバロないしコンティニュオのパート譜のオリジナル出版譜が見つかっていませんでした。また、ベーレンライターから1957年に出版されたHinnenthal のエディションは、エディターのペンが加えられ、オリジナルから相当装飾されていて、現在は廃刊となっています。ところが、この鍵盤のパート譜のオリジナルの出版譜が、1994年パリの国立図書館に存在していることが確認され、1996年にミラノの出版社からファクシミリ・エディションとして出版されました。
 今回のレコーディングのためにクラウディオ・ブリツィはコンピュータを使って、このファクシミリからいっさいの修正を加えることなく演奏用のスコアを作成し、どの曲をチェンバロで、どの曲をオルガンで奏くかを検討。それにふさわしいオルガンを探してイタリア国内を見て歩き、さらに当時のテレマンが使ったであろうベルリンのシュルロッテンブルク宮にあった1707年 MIETKE のチェンバロのコピーを、Franco BARUCCHIERI に依頼して1997年に制作させました。
 選ばれたオルガンはイタリアの Ancona から76km 内陸に入った Fabriano という街の“Chiesa Madonna Della Miseri Cordia”という名の教会にある、Guido PINCHI, 1993というオルガンで、美しい音とオルガンのサイズがテレマンのコンチェルトにぴったり。
 録音は5月20日から22日の3日間、まずこの Fabriano の教会で、専ら夜8時から明朝3時というスケジュールで行われました。教会の周囲のノイズをさけるためです。
 次いでチェンバロをつかう楽曲の録音は、ウンブリアの Terni の近くにある、Arrone の古い教会を改造して今日ウンブリア州のセミナー会場などに利用されている“Antico combento S.Francesco”で、5月24日から26日におこなわれました。世界初録音2枚組CDとして今秋発売の予定です。
[★CDは1999年11月、25CM-581〜2として発売]
オルガン
インデァミューレとブリッツィ
(2) 5月31日、6月2日、4日(スタジオ・バウムガルテン、ウィーン)
  アンサンブル“11”(イレヴン)
 第1弾の“アンサンブル“11”プレイズ・モーツァルト”が好評に迎えられ、話題を呼んでいるウィーン・フィルの木管、金管のトップメンバーによる11名のグループの第2弾は、今回3日間で都合4セッションが追加され、2月に続いて全曲ヨハン・シュトラウス作品で収録されました。「こうもり」序曲や「酒、女、歌」のような管弦楽作品として知られている名曲を、この編成でどう処理するかをどうぞお楽しみに。
 尚、メンバーの内、ラルス・ミヒャエル・シュトランスキー(Hr)とハンス・ペーター・シュー(Trp)の2人は、この8月の草津アカデミーに講師として参加します(シューはPMFにも)。という訳で、注目のアンサンブル“11”第2弾完成。
[★CDは2000年6月、28CM-594として発売]
アンサンブル11
(3) 6月1日〜2日(スタジオ・バウムガルテン、ウィーン)
  クラウス・パイシュタイナー&遠山慶子
 元ウィーン弦楽四重奏団のヴィオラ奏者クラウス・パイシュタイナーの、古典・初期ロマン派ソナタ集が完成しました。ウィーン・フィルで永年ソロ・ヴィオラに次ぐ首席奏者のポジションのパイシュタイナーは、現在ウィーン市立音楽院でも後輩の教育にあたっており、優れた音楽家として尊敬を集めているフィルハーモニカーの1人ですが、レコードの少ない古典派のヴィオラ・ソナタを集めた1枚のCDを録音しました。
 昨年、メンデルスゾーンの初期作品のソナタとフンメルのソナタの2曲を収録。今年はその完成をめざして昨年同様に遠山慶子を迎えてヴァンハルのソナタ ニ長調を収録しました。ピアノはベーゼンドルファー。来春発売予定です。
[★CDは2000年10月、28CM-611として発売]
パイシュタイナー&遠山
(4) 6月10日〜11日(スタジオ・バウムガルテン、ウィーン)
  オペラ舞踏会オーケストラとメラニー・ホリデイ
 恒例のカメラータのオペレッタ・プロジェクトは、今年は6月10日、11日、オペラ舞踏会オーケストラ(ウヴェ・タイマー指揮)で、メラニー・ホリデイの歌を含めて、スッペの「ボッカチョ」から数曲と、オッフェンバックの「ホフマン物語」「ペリコール」「パリの生活」「天国と地獄」から序曲やアリアが収録されました。
 全曲を紹介するのはCD発売の楽しみに残しておくとして、代表的な曲目は以下の通りです。
 スッペ:『ボッカチョ』より「恋はやさしい野辺の花よ」
     「ベアトリ姐ちゃん」「トスカーナの二重唱」
     『美しのガラテア』序曲
 オッフェンバック:『ホフマン物語』より「ホフマンの舟歌」
          『天国と地獄』より「カンカン」
          『ペリコール』序曲、ほか
 [★CDは1999年11月、25CM-600として発売]
メラニー&オペラ舞踏会オーケストラ
(5) 6月12日〜13日(スタジオ・バウムガルテン、ウィーン)
  ウィーン・ビーダーマイヤー・ゾリステン
 好評だったファールバッハの作品集の2枚目を、現在制作中のビーダーマイヤー・ゾリステンは6月12日、13日に数曲の収録を行って1枚分を完成しました。ファールバッハはヨハン・シュトラウス I世のオーケストラでフルートを吹いていて、フルート作品にも優れたものがありますが、「ラデツキー行進曲」影の作曲者とも噂されている才能のある人だったようです。今回のCDでその評価がさらに高まると思われます。
 編曲のトッツァウアー氏他、関係者の資料探しも大変で、注目のランナーの「四季」に続く、カメラータのウィーン音楽の秘曲シリーズの1枚となります。
[★CDは2001年7月、28CM-575として発売]
ビーダーマイヤー・ゾリステン
(6) 6月14日〜17日
  パノハ弦楽四重奏団(チェコ、プラハ)
 カメラータのチェコ、プラハでの初録音は国立オペラ座のすぐ裏、市街地の真っ直中、St. Michael's Lutherran Church(聖ミヒャエル教会)で、パノハ弦楽四重奏団による2曲のスメタナの弦楽四重奏曲です。
 聖ミヒャエル教会はシュヴァイツアーがオルガンを2度にわたって演奏したことでも有名【註】で、小さいけれど美しい響きは、弦楽四重奏等に最高の音場を提供してくれます。パノハSQのスメタナは今回が9年ぶり2度目の録音(前回はスプラフォンに1989〜90年録音)です。
 今や「スメタナ弦楽四重奏団」の後継者として、チェコ第1のクァルテットに成長し、最近ではアンドラシュ・シフのパートナーとして、ドヴォルジャークのピアノ五重奏曲 イ長調等をワーナー・クラシックに録音しています。昨年より「草津夏期国際音楽アカデミー」でレギュラリーにフェスティヴァル・クァルテットとして出演、日本での評価も高まりつつあります。
 このスメタナ2曲に今回は Vladimir Sommer(ウラディミール・ゾンマー/1921年生まれ〜1997年9月死去)の弦楽四重奏曲 第1番 ニ短調を収録しました。故人は共産党員だったため、今ではチェコでは作品があまり演奏されなくなりましたが、伝統的なチェコのメランコリーを持った美しい作品であり、政治活動と作品は別のものとして、評価されるべきかもしれません。

 【註】ここ St. Michael Church には1923と1928年にアルベルト・シュヴァイツアー博士が来てオルガンを演奏している。ちなみに1923年のプログラムにはフランクとバッハを演奏したとある。教会の名前と住所は Kostel Sv.Michala, Vjircharich 1, Praha である。
[★CDは2001年7月、28CM-636として発売]
パノハSQ
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