2008年11月アーカイブ

 カメラータの11月新譜2枚をご紹介します。
CMCD-28165 まず1枚目は『武満 徹:SONGS/腰越満美、羽山晃生、山田武彦』(CMCD-28165)。武満 徹が書いた「うた」には、伴奏が残された作品が2曲ありますが、その他の作品には伴奏がありません。そのため、これまでにさまざまなアレンジで演奏や録音が行われてきました。本アルバムはその武満の「うた」を20曲集め、腰越満美(ソプラノ)と羽山晃生(テノール)が、山田武彦即興演奏(ピアノのほかトイピアノ、サヌカイトなども使用)にのせて演奏・録音が行われたものです。武満が他界してからすでに10年以上の歳月が流れましたが、気鋭の演奏家たちの協業によって、親しみやすく、メッセージあふれる武満の「うた」が、今ここに息を吹き返します。

CMCD-28171 2枚目は『マーラー歌曲集/白石敬子』(CMCD-28171)。シューベルト、シューマン、ブラームスなどリートの代表作を精力的に収録してきた白石敬子(ソプラノ)による最新作は、ウィーンの世紀末を代表するマーラーの歌曲集。日本人として初めてウィーン国立歌劇場の専属歌手となり、本格派オペラ歌手として演奏活動を続けてきた白石敬子が、白石隆生(ピアノ)の伴奏を得てマーラーのドラマティックな歌曲を歌い上げます。

CMCD-28163 11月10日発売の 『シューマン:ヴァイオリン・ソナタ全集/シュトイデ&バティック』(CMCD-28163)が11月20日発刊の読売新聞夕刊に掲載されました。
 ウィーン・フィルのコンサートマスターを務める若手実力者フォルクハルト・シュトイデの演奏は「格調高く深みのある語り口とまろやかな響きで作曲者の心境を味わい豊かに伝える」「(ローランド・)バティックのピアノもしっとりとした叙情性に富む」とコメントをいただいております。
 先日の第24回つくば国際音楽祭で来日し観客を魅了した二人は、CDでも好演を聴かせています。

CMCD-28168 11月10日に発売された『天使のピアノ/青柳いづみこ』(CMCD-28168)が『レコード芸術』12月号の「話題のNEW DISC」コーナーで紹介されています。
 『天使のピアノ』とは、1885年に横浜でドイツのデーリング商会が製造販売し、社会福祉法人滝乃川学園の創立者、石井亮一の夫人で、知的障害児の保護・教育・自立に奔走した石井筆子が所有していた国内最古級のアップライト・ピアノの愛称です。
 筆子が世を去ってから長きにわたって忘れ去られていましたが、多くの有志の協力によって1998年に修復され、そのお披露目演奏会で青柳いづみこが演奏しました。
 CD『天使のピアノ』は、このピアノが保管されている滝乃川学園のチャペルで収録。
 「時代を超えて、人々の想いがつながって、この由緒あるピアノに集まった、そんなことを思うアルバムである」と、片桐卓也氏からご紹介いただいております。

レコーディング風景

 10月中旬から下旬にかけてウィーンとイタリアで行われたレコーディング・ニュースを4本追加しました。今回もカメラータならではの珍しい作品や作曲家が並んでいます。

 まずはウィーンでベルリン・フィルの首席、シュテファン・ドール(ホルン)によるモーツァルトのホルン協奏曲全集。完璧なテクニック、豊かな音楽性を誇るドールによるレコーディングというだけでも注目に値しますが、今回の"全集"はある面白い試みがなされています。詳しくはぜひニュースをご覧ください。現在、クリスマス前にヨーロッパでアルバムを披露すべく急ピッチで制作を進めていますが、ここ日本でも年内のリリースを予定しています。
 続いて同じスタジオ・バウムガルテンで、ウィーン・コンツェルト・フェラインによるハイドンの交響曲のレコーディング。ファゴット演奏の第一人者、ミラン・トゥルコヴィッチが指揮をとりました。ハイドンの没後200年となる来年のリリースを予定しています。
 この後、カメラータのレコーディング・クルーはヴォルフガング・シュルツ(フルート)と共にイタリアへと移動。そこでジュゼッペ・ノヴァ(フルート)、ミヒャエル・オマン(リコーダー)、リノ・ヴェルニッツィ(ファゴット)、クラウディオ・ブリツィ(クラヴィオルガン)らと合流、ボワモルティエの「3本のフルートと通奏低音のためのソナタ」のレコーディングに入りました。素晴らしい名手たちによるレア・レパートリー・アルバムとして注目を集める事は間違いないでしょう。
 続いてシュルツとブリツィのデュオで、クレプスのソナタをレコーディング。クレプスはすでにトーマス・インデアミューレ(オーボエ)とブリツィのデュオで3曲が発売済ですが、今回はオリジナル通りにフルートでの演奏・収録を行いました。

■レコーディング・ニュースのインデックス・ページへ

●ドール/モーツァルト:ホルン協奏曲全集
●トゥルコヴィッチ&コンツェルト・フェライン/ハイドン:交響曲
●シュルツ、ノヴァ、オマン ほか/ボワモルティエ:ソナタ
●シュルツ&ブリツィ/クレプス:ソナタ

CMCD-99036〜8 10月の発売以来好評をいただいている『三善 晃の音楽』(CMCD-99036〜8)が各誌紙で紹介されています。『レコード芸術』12月号新譜月評のコーナーで特選盤に選ばれ、佐野光司氏から「1960年代から90年代までのオーケストラの軌跡が追えるような内容であり、三善の作品の変遷を聴き取るには絶好のアルバムである」と、長木誠司氏からは「個々の演奏はどれもきわめて高度な仕上がりであった。それを録音と編集が可能な限り完璧に捉えている」と高評価をいただいております。
 10月27日発刊の毎日新聞では、梅津時比古氏から「全編、緊張感に満ちた素晴らしい演奏である」との評価をいただき、11月19日発刊の毎日新聞夕刊『私の3枚』のコーナーにおいても梅津氏、礒山雅氏、岩井宏之氏からそれぞれ選出いただき絶賛されています。
 11月13日発刊の朝日新聞では、片山杜秀氏から「日本人なら避けて通れないディスク」と、ご紹介いただきました。

 また、今回のCDで名演を聴かせた指揮者の沼尻竜典氏が『ぶらあぼ』12月号のインタビューの中で、「すぐれたソリストたちとの共演も、このディスクの聴きどころだと言ってよいでしょう」と紹介し、「今回の3枚組のディスクは、日本のファンにとってはもちろん、海外に向けても発信すべき貴重なレパートリーだと思います」と、その思いを語っています。

 カメラータの11月新譜は通常の25日に加え、本日10日にもクラシック3タイトル、ジャズ2タイトルがリリースされます。

CMCD-28163 まず1枚目は『シューマン:ヴァイオリン・ソナタ全集/シュトイデ&バティック』(CMCD-28163)。ウィーン・フィルの若きコンサートマスター、フォルクハルト・シュトイデ(ヴァイオリン)とウィーンの奇才、ローランド・バティック(ピアノ)によるデュオです。二人は以前からコンサートでの共演を始め、カメラータから発売された『ベートーヴェン:クロイツェル・ソナタ』でも共演していましたが、新譜がリリースされるのは約10年ぶりとなります。
 シューマンのヴァイオリン・ソナタは全部で3曲ありますが、どれも音楽的・技巧的に難易度が高い作品で、中でも第3番のソナタを収録したCDは多くありません。その難曲にこれからのウィーン・フィルをリードしてゆくシュトイデが挑む注目盤です。

CMCD-28161 2枚目は『バティック・プレイズ・モーツァルト/ローランド・バティック』(CMCD-28161)。1枚目に紹介した新譜でシュトイデを好サポートしたバティックによる3年ぶりのソロ・アルバムです。タイトル通りモーツァルトのソナタや幻想曲を収めたアルバムですが、そこにバティック自身の作曲によるイントロダクションを加え、そのままシームレスにモーツァルトを演奏するという新しい試みがなされています。
 ちなみにバティックは1991年に『モーツァルト:ピアノ・ソナタ全集』で、その年における最高のモーツァルト作品を演奏した演奏家に贈られる「ウィーン笛時計賞」を受賞するなど、クラシックのピアニストとして高く評価されている一方、鬼才フリードリヒ・グルダに師事し、ジャズも演奏するというユニークなピアニスト(今月はバティックによるジャズの新譜もリリースされます)。バティックならではのコンセプトが加わった楽しいアルバムに仕上がっています。

CMCD-28168 3枚目は『天使のピアノ/青柳いづみこ』(CMCD-28168)。タイトルの「天使のピアノ」は、ドイツのデーリング商会によって1885(明治18)年に製造され、1891(明治24)年に日本最初の知的障害児のための施設として創立された滝乃川学園に今も存在する、日本最古級のアップライト・ピアノの愛称です。創立者として生涯を学園に捧げた石井亮一の夫人、筆子が愛用したピアノとして、「その時歴史が動いた」(NHK/2006年12月放送)や映画「筆子・その愛―天使のピアノ」(常盤貴子 主演/山田火砂子 監督)でも数々の感動的なエピソードと共に紹介されました。音楽に触れあう喜びを学園の子供たちに与えたこのピアノは、筆子が世を去った戦後の長きにわたって忘れ去られていましたが、多くの有志の協力によって1998年に修復され、その愛らしい姿と可憐な響きが現代に蘇りました。
 本アルバムは、滝乃川学園の全面的な協力により、「天使のピアノ」が置かれている学園のチャペルで収録が行われました。選曲・演奏は修復記念コンサートで演奏をおこなった青柳いづみこ。青柳によるアンデルセン物語などの朗読、石井夫妻と滝乃川学園の歴史なども収めました。青柳いづみこが「甘くてやわらかい、はちみつ色の響き」と表するピアノの響きをぜひお聴きください。

 カメラータの11月新譜は通常の25日に加え、本日10日にもジャズ2タイトル、クラシック3タイトルがリリースされますが、ジャズはカメラータのジャズ・レーベルである「インサイツ(insights)」から久々のリリースで、現在「第24回つくば国際音楽祭」で来日中のローランド・バティックによるトリオのアルバムです。

CMCD-25003 まず1枚目は『オール・ザ・シングス・ユー・アー/バティック、ヴェルクル、ミュールホファー』(CMJD-25003)。バティックやベースのハインリッヒ・ヴェルクルによるオリジナルのほか、ビル・エヴァンスやチャーリー・パーカー、そしてタイトル曲などのスタンダード・ナンバーを収録。親しみやすいアルバムとなっています。

CMCD-25004 2枚目は『ブリッジズ─スティル/バティック、シャバタ、ヴェルクル』(CMJD-25004)。本アルバムは1995年に同トリオで録音、インサイツから発売された『ブリッジズ』の第2弾となるアルバムで、ヨーロッパではすでにリリースされて好評を博しています。直輸入盤となりますが、ここ日本ではジャズ・ライターの岩浪洋三氏による日本語解説を添付して発売いたします。

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