カメラータの11月新譜は通常の25日に加え、本日10日にもクラシック3タイトル、ジャズ2タイトルがリリースされます。
まず1枚目は『シューマン:ヴァイオリン・ソナタ全集/シュトイデ&バティック』(CMCD-28163)。ウィーン・フィルの若きコンサートマスター、フォルクハルト・シュトイデ(ヴァイオリン)とウィーンの奇才、ローランド・バティック(ピアノ)によるデュオです。二人は以前からコンサートでの共演を始め、カメラータから発売された『ベートーヴェン:クロイツェル・ソナタ』でも共演していましたが、新譜がリリースされるのは約10年ぶりとなります。
シューマンのヴァイオリン・ソナタは全部で3曲ありますが、どれも音楽的・技巧的に難易度が高い作品で、中でも第3番のソナタを収録したCDは多くありません。その難曲にこれからのウィーン・フィルをリードしてゆくシュトイデが挑む注目盤です。
2枚目は『バティック・プレイズ・モーツァルト/ローランド・バティック』(CMCD-28161)。1枚目に紹介した新譜でシュトイデを好サポートしたバティックによる3年ぶりのソロ・アルバムです。タイトル通りモーツァルトのソナタや幻想曲を収めたアルバムですが、そこにバティック自身の作曲によるイントロダクションを加え、そのままシームレスにモーツァルトを演奏するという新しい試みがなされています。
ちなみにバティックは1991年に『モーツァルト:ピアノ・ソナタ全集』で、その年における最高のモーツァルト作品を演奏した演奏家に贈られる「ウィーン笛時計賞」を受賞するなど、クラシックのピアニストとして高く評価されている一方、鬼才フリードリヒ・グルダに師事し、ジャズも演奏するというユニークなピアニスト(今月はバティックによるジャズの新譜もリリースされます)。バティックならではのコンセプトが加わった楽しいアルバムに仕上がっています。
3枚目は『天使のピアノ/青柳いづみこ』(CMCD-28168)。タイトルの「天使のピアノ」は、ドイツのデーリング商会によって1885(明治18)年に製造され、1891(明治24)年に日本最初の知的障害児のための施設として創立された滝乃川学園に今も存在する、日本最古級のアップライト・ピアノの愛称です。創立者として生涯を学園に捧げた石井亮一の夫人、筆子が愛用したピアノとして、「その時歴史が動いた」(NHK/2006年12月放送)や映画「筆子・その愛―天使のピアノ」(常盤貴子 主演/山田火砂子 監督)でも数々の感動的なエピソードと共に紹介されました。音楽に触れあう喜びを学園の子供たちに与えたこのピアノは、筆子が世を去った戦後の長きにわたって忘れ去られていましたが、多くの有志の協力によって1998年に修復され、その愛らしい姿と可憐な響きが現代に蘇りました。
本アルバムは、滝乃川学園の全面的な協力により、「天使のピアノ」が置かれている学園のチャペルで収録が行われました。選曲・演奏は修復記念コンサートで演奏をおこなった青柳いづみこ。青柳によるアンデルセン物語などの朗読、石井夫妻と滝乃川学園の歴史なども収めました。青柳いづみこが「甘くてやわらかい、はちみつ色の響き」と表するピアノの響きをぜひお聴きください。