カメラータ・トウキョウ レコーディング・ニュース
 
シュテファン・ドール/モーツァルト:ホルン協奏曲
  2008年10月12日〜14日/スタジオ・バウムガルテン(ウィーン)

 10月のウィーンでの録音はいつものスタジオ・バウムガルテンで12日からスタート。内容はベルリン・フィルの首席ホルン奏者、シュテファン・ドールによるモーツァルトのホルン協奏曲。シュテファンのCDは、カメラータからはアンサンブル・ウィーン=ベルリンのメンバーとして出ていますが、彼がメインのレコーディングは今回が初。かなり面白いレコーディングになったと思います。というのも、これまでのモーツァルトのホルン協奏曲のCDと違って、新しいアイディアが入っているためです。

【曲目】
ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト:
 ホルン協奏曲 第2番 変ホ長調 K.417
 ホルン協奏曲 第3番 変ホ長調 K.447
 ホルン協奏曲 第4番 変ホ長調 K.495
 ホルン協奏曲 第1番 ニ長調 K.412/514(386b)[補筆完成:フランツ・クサヴァー・ジュスマイア(K.514のみ)]
 ホルン協奏曲 第1番 ニ長調 K.412/514(386b)[補筆完成:ロバート・レヴィン]
ニーノ・ロータ:
 アンダンテ・ソステヌート

【演奏者】
シュテファン・ドール(ホルン)/エマヌエル・シュルツ(指揮)/カメラータ・シュルツ

 これが予定の曲順ですが、まず、なぜニーノ・ロータの作品が入っているのかをお話ししなくてはいけないでしょう。ふつう「ホルン協奏曲 第1番」といわれる作品のうち、死の年の1791年に書かれたというロンドK.514は、実はモーツァルトが書いたのはフラグメントで、サンクト・ペテルブルクにあるスコアはモーツァルトのものでなくフランツ・クサヴァー・ジュスマイアによるものです。作品としては未完成で、K.412とK.514とで「第1番」としているのですが、ニーノ・ロータがあるホルン奏者に頼まれて、「第2楽章」を書いたのというのが、アンダンテ・ソステヌートです。
 したがって、このCDの解説を執筆するウィーン楽友協会のオットー・ビーバ博士は、ロータの作曲による部分を中間楽章としてK.412とK.514の間に入れるべき、と主張されました。しかし、シュテファンはあまりにもモーツァルトの作品と楽想がかけ離れているので、エキストラとして収録したいと語っています。というわけで、今、私も曲順を決めかねています。
 レヴィンは有名なモーツァルト学者で、自分こそモーツァルトの気持ちが一番わかる人間だと信じている人ですが、レヴィンが完成させたロンドは2008年に出版され、解説も彼自身が書くようです。作品はかなり良くできています。ビーバ博士とはこれについて楽友協会でだいぶ論議しました。

 指揮は作曲家としても活躍中のエマヌエル・シュルツ。カメラータ・シュルツにはノーベルト・トイブルがクラリネット、ハイディ・リチャウアー教授(ザルツブルク・モーツァルテウムの教授でフリッツ・ドレシャルの先生)がチェロで参加しているほか、ヴォルフガング・シュルツの兄でウィーン交響楽団のソロ・チェロ、ワルター・シュルツ、コンサートマスターはシュルツの娘ヴェロニカ・シュルツ、ヴィオラはシュルツの奥さんでもあり長くウィーン室内管弦楽団で奏いていたウラ・シュルツと、シュルツ・ファミリーも総動員。

 愉しい雰囲気の中で、皆がプレイバックを聴きにモニター・ルームに集まり、スタジオに戻っては真剣に演奏を修正し、より高い音楽を目指して、良い仕事をしてくれました。
(井阪 紘)

[★CDは2008年12月、CMCD-28176として発売]

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シュテファン・ドール(ホルン)
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エマヌエル・シュルツ(指揮/左)とドール
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ハイディ・リチャウアーとワルター・シュルツ(右)
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ドールとヴェロニカ・シュルツ(前列右)
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