カメラータ・トウキョウ レコーディング・ニュース
 
世界初録音!
カール・チェルニー:ヴァイオリンとピアノのための作品集
  2008年3月9日〜12日 スタジオ・バウムガルテン(ウィーン)

 このたび、ウィーン楽友協会アーカイヴの協力により、カール・チェルニーのヴァイオリンとピアノのデュオの作品集を、世界で初めて録音することができた。ヴァイオリニストはウィーン在住のヴィルフリート・和樹・ヘーデンボルク。これが彼にとっての初レコーディングともなった。ウィーン・フィル団員である彼の活躍ぶりを、自身のブログ「K & K+K aの生活」でご覧になっている方も多いだろう。今回の録音風景もこのブログですでに紹介されてしまったので、あわててレコーディング・ニュースでもお知らせする次第である。
 ピアニストは、ブルーノ・カニーノ。今回の録音は彼以外には考えられない。それほどにピアノには超絶技巧が要求される。この1枚のCDでピアニストがどれだけ多くの音を弾くのか、想像がつかないほどだ。
 2007年の夏、草津夏期国際音楽アカデミー&フェスティヴァルでヘーデンボルクの師であるウェルナー・ヒンクとブルーノ・カニーノがチェルニーのピアノ四重奏曲 第1番を演奏した折(音楽祭の記念盤CDに収録されたが、これが世界初録音盤である)、そっとこのヴァイオリンとピアノのデュオのパート譜(当時はデュオですらパート譜で出版されていた)をブルーノに手渡したのがこの録音への第一歩であった。イタリアへ録音に行った12月にブルーノに電話して「ウィーンで録音したいのだが」と打診。「面白いから挑戦してみるよ!」と快諾を得て、ヘーデンボルクには2月にミラノへ練習に行ってもらった。
 さて、録音に使うピアノだが、前後の録音の関係からベーゼンドルファーの280cmの楽器になり、ブルーノの「鍵盤は軽いアクションに……」という希望を調律の照沼純さんに伝え、ほぼつき切りで立ち会ってもらった。
 パート譜2つを交互に見ながらの録音は困難で神経を使った。デビュー録音のヘーデンボルクのヴァイオリン・パートも厳密に聴いて、「新人だから」という妥協はしなかったが、できるだけプレッシャーをかけずに今彼が持っている実力のすべてが出せるよう配慮したつもりである。
 編集が楽しみなのは、アーティストより私自身かもしれない。テクニックを聴かせるだけでなく、とてもよい音楽が詰まっている楽しいアルバムになったと信じている。
 (井阪 紘)

 【曲目】
 カール・チェルニー:
 ヴァイオリンとピアノのための3つのソナチネ 作品390-1〜3
 ヴァイオリンとピアノのための変奏曲 ニ長調 作品1
 華麗なるポロネーズ イ長調 作品314
 スペイン人 イ長調 作品305

 【演奏者】
 ヴィルフリート・和樹・ヘーデンボルク(ヴァイオリン)
 ブルーノ・カニーノ(ピアノ)

[★CDは2008年12月、CMCD-15096〜7として発売]
0803
ヘーデンボルク(左)とカニーノ 
0803
 ヘーデンボルクとカニーノ
0803
 

楽譜を前に打合せする
カニーノ、ヘーデンボルク、井阪
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