カメラータ・トウキョウ レコーディング・ニュース
 
ライスターとボーグナーによるオペラ・アリアの編曲集
  2008年 2月1日〜5日 フェルトキルヒ、オーストリア

 カール・ライスターの2年ぶりのフェルトキルヒでの、フェレンツ・ボーグナーとの録音です。
 今回は、「ベルカント」と題した、オペラ・ファンタジーとオペラ・アリアの編曲を中心とした選曲。この中には、初めてレコーディングされる作品も含まれ、クラリネットで演奏するにはどれもが難曲といわれるヴィルトゥオーゾ・ピースに、70歳を越えたライスターが挑戦した画期的なアルバムです。
 今回はオペラのアリアを、歌手のようにクラリネットで“歌う”演奏を目指したのだが、その中にはオリジナルでクラリネット・ソロに書かれたオペラの間奏曲や序曲のクラリネット・ソロもあれば、オペラの旋律を主題にその変奏曲を付した作品、さらには「オペラ幻想曲」といった風のものも含まれ、有名曲の誰もが知っているメロディーもあれば、知られざる名曲、たとえばイタリアの作曲家、パチーニの「サフォ」というオペラの3幕のビッグ・クラリネット・ソロや、ベルグソンの「モントフォルトのルイザ」というオペラのアリア集も。
 面白かったのは、ロマン派の作曲家で過去に「ファゴット小協奏曲」や「トロンボーン協奏曲」等を録音したフェルディナンド・ダヴィッドが、シューベルトの作曲した「郷愁のワルツ」の「序奏、主題と変奏曲」の大曲は、この楽譜を校訂したのが18世紀の末、ロシア人でニューヨーク・フィルハーモニーのソロ・クラリネット奏者だったシメオン・ベリソンで、ライスターの話によると、その頃のニューヨーク・フィルはみんながドイツ式のクラリネットを吹いていたから、この楽譜は自分にピッタリあっている──など、こんなところで面白い発見をする。
 シュトルツマン編曲のオペラ名アリア集の多くは、シュトルツマン自身によってRCAにレコーディングされたものだが、このアルバムが廃盤で入手不可能だというので、積極的に採用した。楽譜はライスターの2007年の3週間にわたるアメリカ・ツアーの最中に、彼が購入したものである。
 こうして収録されたフェレンツ・ボーグナーのピアノとのデュオは、ライスターもこれで我々のコンビの録音は最後かも──という覚悟で臨んだだけに、5日間充実した最高の演奏を収録できたと思っている。
(井阪 紘)

場所:コンセルヴァトリウムザール(フェルトキルヒ,オーストリア)
ピアノ:ベーゼンドルファー・インペリアル

ライスター
ライスター
 フェレンツ・ボーグナー(ピアノ)と
 カール・ライスター(クラリネット)
ライスター
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